(書評13)機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資法

※この書評は、約3,500文字のため、読むのに約3分かかります

対象者

  1. 逆張り戦略が上手く行かない方
  2. PER、PBR、ROEの利用の仕方に自信がない方
  3. バリュー投資を行っている方

書籍のキーワード

  1. マーケット・アプローチ
  2. バリュエーション
  3. 落ちてくるナイフ

概要

著者の泉田 良輔氏は、慶應義塾大学商学部卒業後、2000年に日本生命保険入社。2002年から2012年までフィデリティ投信の調査部にて証券アナリストとして従事。2013年にGFリサーチおよびナビゲータープラットフォームを設立。同フォームでは個人投資家のための金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、経済メディア「LIMO(リーモ)」で監修および運営に携わっています。2018年にマネイロなどの金融サービスを展開する株式会社OneMile Partnersを設立されてます。相場を生き抜いてきたプロです!

本書は、

  1. 個別銘柄を検討する前のスクリーニングの仕方
  2. 投資したくなるまたはついつい分析したくなる会社の特徴
  3. 投資したい会社の株はいくらでかっていくらで売ればよいか?
    (バリュエーションの問題)                           

   などを

 PER PBR ROEの点から解き明かす本です。

そのため、創業間もなく先行投資中で赤字の企業には利用しづらい点はありますが、

バリュー株投資を行っている方で

「最近、株がぱっとしないなぁ~」という方には、一読の価値ありです。

管理人独自の5個のポイント

銘柄リストの考え方 (Kindle の位置No.476-477)

ブルーチップ でも、 いつも買いというわけでは なく、どのタイミングで買うのかが重要。 常に自分で買いたい銘柄のリストと買いたい株価があるのが理想

かぶ1000氏が著書で

「ランキング 化 し た 保有銘柄を毎週見直して最適化」

されていると紹介がありました。

まさにかぶ1000氏の著書と同じですね。

オリエンタルランドならいくらなら買っても良いか?

ソフトバンクならいくらなら買っても良いか?

という一覧をつくりタイミングを見計らうのが非常に大切になります。

このあたりの値付けの感覚は、不動産投資と同じで

いくらなら買っても良いか?という相場感とバリュエーション(企業評価)は

時間をかけて養っていくしかほかないですね。。

株主資本比率が高い会社ののびがよかった(Kindle の位置No.908-910)

オリエンタルランド は 2008 年 3 月末 の 株価 を 100 と する と、 新型 コロナ の 影響 は あっ た ものの、 2020 年 11 月末 で見ると約 12 倍 になっ てい ます。 まさに「 10 倍 株」 となり、 非常 に 大きな 株価 上昇 といえる でしょ う。 同じ 期間 の TOPIX が 1. 4 倍 です ので、 オリエンタルランド の パフォーマンス は「 超絶」 よかっ た と いえ ます。

驚きと言えば、驚きでした。

世界中で車を販売しているトヨタと日本でディズニーリゾートを運営している会社の株価が

こんなに明暗が分かれているのが、、、

ただし、個人的には、株主資本比率の高さが株価につながったというのは、結果論な気はしてます。

なんらかの事情でディズニーリゾートのブランド力が高くなり、

オリエンタルランドのバリューションが上がったと考えた方が個人的にはしっくりきます。

(2010年3月期PER27倍→2020年3月期72.2倍)

株主資本と株価の関係(Kindle の位置No.1058-1061)

「株主資本が増加し続けることで上場企業の株価の下値は切り上がっていくんだよ。 株主資本を積み上げることができる会社、つまり赤字にならない企業を株価が大きく下落した ときにコツコツ拾っていくと、長い目で見てリターンは大きくなっているものだよ」 

検証してみようとおもいます。

さいたま県中心にスーパーを展開している

(8279)ヤオコーは知っていますか?

32期連続増収増益です。

株価には、凸凹はありますが、下記の通り右肩上がりですね。

もう1社あげると漬物業界1位のシェアを誇る

(2925)ピックルスコーポレーションを知っていますか?

上場した2001年2月以降赤字を計上したのは、2006年2月期のみです。

また、2006年2月期以降売上は順調に毎年伸びている優良企業です。

株価ですが、ヤオコーと同様凸凹はありますが、下記の通り右肩上がりですね。

やはり、10年、20年と順調に黒字を積み上げて行く会社の株価は、右肩上がりになる可能性は高そうですね。

バリュエーションは未来を考えるな! まずは過去を見る (Kindle の位置No.2434)

「投資をしたいな」「気になるな」と思えば過去のバリュエーションレンジと現在の水準を確認します。現在のバリュエーションが過去のレンジと比べて低い位置にあれば、すぐに投資機会となるかもしれませんし、レンジの高い位置やレンジの上にあれば、慎重に検討することになります。

管理人は、本書と同様に10年分の以下の項目のバリュエーションの

比較をしています。

作成は面倒ですが、どのタイミングで「買い」を行うかを検討する際に

「高値掴み」を避けることができます。

なお、バリュエーションを分析するにあたり、注意点は以下です。

  1. 上場間もない会社はデータが少なすぎて参考にならない
     銀行はお金を貸すときに少なくとも3期分の決算書を求めます。株式は、債券より変動が大きいので少なくとも5年分程度の財務内容が無いと適切な分析は難しいと考えてます。
  2. 頻繁に赤字がある企業の経年比較は困難
     流行りのSaas関係の企業は、シェア拡大のため、販促費がかさむため、赤字になる会社が多いです。赤字の場合は、PER、ROEは計算できないので、頻繁に赤字ある企業の経年比較は難しいです。
  3. 増収増益企業や大幅増益企業については過去からの評価には限界がある
     業績が上向きバリュエーションが切り上がっている企業は、これまでのレンジの幅で株を買おうと思うと買えなくなります。定性分析を加えて「どの程度なら買っても大丈夫そうか?」を判断していく必要があります。

個人投資家は複利とバリュエーションを意識した投資を (Kindle の位置No.1385-1387)

タイミングをとりたい売買はどうすればよいでしょうか。それは、本書で見てきたように、過去のバリュエーションを見ていくことで、その精度を上げるしかありません。株式投資をする個人投資家であれば、資本効率を測るROEと、PERとPBRなどのバリュエーションをマスターするところが第一歩になります。

四半期毎に運用成績が求められるファンドマネージャーと異なり、保有期間に制限のない個人の強みは「逆張り」つまり「落ちてくるナイフ」を掴む戦略が行えることです。

下落し始めた銘柄の買付の諺に「半値八掛け二割引」などがありますが、具体的な戦略は結構悩むと思います。

この点、ROE、PERとPBRなどの過去10年のバリュエーションの推移を見て、安値圏で買い、「ホールド」するのが一番手堅い戦略になると考えられます。

本書を読むと今日からわかるorできる3つのポイント

はじめに
第1章 「予想しないとダメ」という思い込みを捨てよう
第2章 歴史を学べばだれでも優良企業に出会える
第3章 「3年で2倍になる株」を探す外国人投資家は何をみているのか
第4章 10倍株の発生のメカニズム
第5章 「株主資本複利」と「スペシャルシチュエーション」へ
第6章 個人投資家でもできる「予想がいらない投資法」
第7章 バフェットの脱・上場株投資思想のワケ
おわりに