対象者
- 投資先を選ぶ時にアカデミックな要素を取り入れたい方
- 「失敗の本質」の著者「野中 郁次郎」氏の「持続的成長企業」の定義を知りたいかた
- 優良・長寿企業の特徴を新しい銘柄選びの参考にしたい方
書籍のキーワード
野中 郁次郎・持続的成長企業・人材マネジメント
概要
本書は、リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所が著書となり、監修は、中小企業大学校総長を務めている野中 郁次郎氏になります。
野中氏の名前は、一度は聞いた事がある方が多いのではないでしょうか?
管理人の新人研修の時には、野中氏の「失敗の本質」が課題図書になっていました。
本書の中で「持続的成長企業」とは、50年以上の歴史があり、30年以上にわたって持続的に株価が概ね上昇トレンドにある日本企業 と定義しています。また、本書では、194の組織にアンケート調査等を行い、「持続的成長企業が備える3つの組織能力」、「持続的成長企業を貫く三対の価値基準」を明らかにしています。
本書は、2010年刊行の本のため、10年前に持続的成長企業として以下の9社があげています。
- イビデン株式会社
- 花王株式会社
- キャノン株式会社
- 信越化学工業株式会社
- 武田薬品工業株式会社
- トヨタ自動車株式会社
- ホンダ技研工業株式会社
- 株式会社村田製作所
- ヤマトホールディングス株式会社
キャノン株式会社と武田薬品工業株式会社以外の7社は
2011年の株価より2021年の株価をが伸びていました。
10年経っても、「持続的成長企業」として取り上げた9社のうち、
7社の株価は、上がっているので読んでも損はないと思います。
管理人独自の5個のポイント
持続的成長企業とは P21
「持続的成長企業」とは、50年以上の歴史があり、30年以上にわたって持続的に株価が概ね上昇トレンドにある日本企業と定義しています。
短期的には、自社株買いなどで変動はしますが、、、
持続的成長企業のマネジメントモデル P37
持続的成長企業がもつ三つの組織能力と三対の価値基準は以下です。
持続的成長企業が備える三つの組織能力
- 実行・変革力「徹底した行動とたゆまぬ自己革命」
- 知の総出力「重層的なコミュニケーションや豊かな関係性による知の創出」
- ビジョン共有力「ぶれない軸を意味レベルで共有」
持続的成長企業を貫く三対の価値基準
- 社会的使命の重視、しかし経済的価値も同時に追求
- 共同体意識、しかし健全な競争も共存
- 長期志向、しかし現実も直視
投資先を選ぶ時にこの6つの基準を満たす企業は、見つけれるの?
次に企業の口コミサイト(Open Work等)を見ます。
100社位見ると企業の社風や人材育成の方針が
なんとなくイメージできるようになりました。
持続的成長企業がもつ三つの組織能力と三対の価値基準を
満たしていると考えてます。
イノベーションのジレンマ P139
たとえば、日本製のガラゲーですね。
気づいたら日本人の二人に一人がiphoneもっていましたね。
NECが携帯を製造してたのは、若い人は知らないかもしれないですね。。。
管理人は、投資先を選ぶ時には、本業以外に本業の強みや特性を活かした新規事業や新規事業の種まきをしている会社を選ぶようにしてます。
柔軟な組織構造・人材配置 P168
管理人は、投資先を選ぶときに
「機械的組織形態」
「有機的組織形態」
どちらに近い組織なのかな?
といつも自問自答してます。
「機械的組織形態」とは、 こまかな規則や手続きがあり、明確な責任制など官僚制に近い組織 です。
例:時価総額が1兆円を超えるような創業50年以上の日系企業(銀行、メーカーなど)
「有機的組織形態」 とは、組織の構成員が比較的自由に動き回り、権限が分権化されて、現場に移譲されている組織 です。
例:マザーズに上場している創業10年程度の会社など
時価総額が1000億以下のマザーズに上場している成長期待の大きいグロース銘柄は、たいてい、「有機的組織形態」が色濃い組織構造になってます。
管理人は、グロース銘柄が好きです。
ただし、注意しているのは、成長期待の大きい金融や不動産業を営む会社に、コンプライアンス違反があった場合、株価の下落が非常に大きいです。(例:TATERU)
そのため、金融や不動産業においては、「機械的組織形態」の要素が見受けれない会社の株は買わないようにしています。
若手を信じてまかせる P197
ここ最近、上場して数年の会社の場合、取締役に30代の方が入っている会社が増えてきました。
年率20%程度の売上の伸びが期待できるグロース株の場合には、30代の若手や女性や外国人が取締役に入っていない時は、基本的に投資を見送るようにしてます。
多様性が乏しく
変化に弱いと会社だと
判断する可能性が高いからです。
一方、バリュー株の場合は、法律などによる参入障壁などがあり、成長よりも既存の市場を守る必要が強いので、取締役に若手や女性がいなくても気にしてません。(例:銀行など)
本書を読むと今日からわかるorできる3つのポイント
- IRを読む時に企業の人材マネジメントにも気を配れるようになる
- 持続的成長企業に投資を行うと株価が上昇する可能性が高いことがわかる
- 長寿企業の株価が必ずしも上がるわけではない事がわかる
本日の書籍情報
【書籍名】日本の持続的成長企業 ―「優良+長寿」の企業研究
【著者名】リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所
【出版社】東洋経済新報社
【出版日】 2010/7/9
【オススメ度】5段階中3
【こんな時に】長期投資家として更に銘柄分析に力をいれたいとき
【頁 数】261ページ
【目 次】
[序章]企業は持続的成長できるのか
[第1章]持続的成長企業のマネジメントモデル
[第2章]持続的成長企業が備える組織能力
[第3章]持続的成長企業がもつ価値基準
[第4章]持続的成長を阻む壁
[第5章]組織・人材マネジメントの鍵
[終 章]持続的成長企業になるために
追伸
経済指標、財務分析、チャートだけの分析に限界を感じて読んだ本です。
企業は、「人」の集合体であることがあらためて感じることができる本です。
銘柄分析につまづいた時にオススメの本です。